表銀座縦走 燕岳〜常念岳

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※この山行は、会員による個人山行の報告です。会として募集・実施した山行ではありません。

実施日

2026年8月8日(土)

登山形式

個人山行

参加者

7名
会員2名、他5名

天候

晴れ時々曇り

コース概要

Yamap参照

歩行データ

歩行時間:Yamap参照
距離:Yamap参照
累積標高:Yamap参照
難易度の目安:健脚向け

山行コメント

運を引き寄せた3日間――表銀座縦走と「午前中勝負」の鉄則​高松市民登山学校47期の仲間とともに、2泊3日の表銀座縦走へ出かけた。中房温泉から燕岳へ登り、大天井岳、横通岳、常念岳を経て一ノ沢へ下る足跡である。
​1日目:途絶えた林道と、開かれた山頂
穂高駅近くの駐車場からジャンボタクシーに乗り込み、中房温泉を目指す。軽快でユーモアあふれる女性ドライバーのトークに引き込まれているうちに、あっという間に登山口へ到着した。中房温泉の土を踏むのは学生時代以来、実に36年ぶり。当時は下山ルートだったため、ここから登るのは初めてとなる。
​目指すは、北アルプス三大急登の一つ・合戦尾根。息の切れる急登だが、要所にベンチが整備され、登山者の活気が背中を押してくれる。合戦小屋で味わった冷たいスイカのみずみずしさは、汗をかいた体に深く染み渡った。
​無事に燕山荘へ到着した直後、外は猛烈な大雨に見舞われた。天気予報通りの悪天候に燕岳山頂は諦めかけていたが、しばらくするとピタリと雨がやみ、奇跡的に青空が広がった。「今だ」と急ぎ身支度を整えて山頂へ向かう。白い花崗岩と奇岩が織りなす独特の景観。36年ぶりに立った山頂の風は心地よく、心ゆくまでその絶景を噛みしめた。山荘へ戻った直後、再び激しい雨が降り始める。まるで私たちが歩く時間だけ、空が開けてくれたかのようだった。
​しかしその陰で、中房線沿いの沢では土石流が発生していたことを翌朝知る。橋は流失し、道路は大量の土砂で分断され、引湯管までも破断。計267名が孤立する大惨事となっていたのだ。その気配すら知らず、私たちは山荘で静かに夜を明かしていた。
​2日目:稜線に息づく命と、背中を押された一歩
午前3時起床、4時15分朝食。予報を覆して広がる好天のもと、「山は午前中が勝負」の鉄則に従い早々に歩みを進める。
​ここからは楽しみにしていた稜線歩きだ。道中、ハイマツの実を貪る数十匹の猿の群れに遭遇。その強面(こわもて)な姿に「雷鳥の害にならねばいいが」と気遣いつつ進むと、今度は7羽の雷鳥親子に出会うことができた。親鳥の傍らを健気に歩く雛たちの愛くるしさに、無事成長を祈らずにはいられない。厳しくも美しい高山帯にはコマクサの群生が咲き誇り、そのたびに足を止めて見入った。
​ガスに包まれていた稜線も、歩みを進めるにつれて視界が開けていく。霧の切れ間から裏銀座の山々、そして尖峰・槍ヶ岳が姿を現した瞬間は、何度経験しても胸が躍る。
​大天荘に荷を置き大天井岳をピストンした後は、常念小屋を目指す。東大天井岳方面の通行止めに伴い巻き道へ迂回。状況に応じた安全最優先の判断だ。続く横通岳周辺は濃いガスに覆われ登頂を迷ったが、YAMAPで目にした「ここまで来て登らなければ、一生後悔する」という言葉が背中を押した。山頂からの展望こそなかったものの、歩みを進めたからこその納得感と達成感があった。行かずに後悔するより、登って大正解だったと思える。
​3日目:雲上のドラマと、必然の「運」
最終日は一転して雲一つない快晴。常念小屋に荷を置き、常念岳山頂をピストンする。眼下には一面の大雲海が広がり、どこを切り取っても絵になる光景だ。何度も足を止め、ファインダー越しにその絶景を焼き付けながら山頂へと登り詰める。
​山頂からの大パノラマを満喫していると、やがて谷から湧き立ったガスが山肌を駆け上がり、天へと昇っていった。その姿はまさに「昇り龍」。快晴の美しさだけでなく、刻一刻と表情を変える山のドラマに息をのんだ。
​常念小屋へ戻り、荷を背負って一ノ沢へ下山を開始する。膝を痛めぬよう慎重に歩みを進める中、すれ違う登山者の苦しげな表情に「頑張ってください」と声をかける。一ノ沢登山口から30分ほど林道を歩き、今回の縦走を無事に締めくくった。
​◇
​猛烈な大雨、土石流による孤立、ルートの通行止め――一歩間違えればトラブルに巻き込まれていた山行だった。しかし振り返れば、雨の隙間で燕岳に立ち、2日目には槍ヶ岳を仰ぎ、3日目には雲海と「昇り龍」を目にすることができた。
​「運が良かった」のは間違いない。だがそれは、単なる偶然ではないはずだ。
早朝行動を徹底し、悪天候の前に小屋へ入ったこと。
天候の変化を見逃さず瞬時に行動したこと。
状況に応じて安全な選択をしたこと。
​「山は午前中が勝負」というセオリーを守り、一つひとつの判断を丁寧につないだ結果が、好機を手繰り寄せたのだ。「運が良かった」のではなく、「運をつかむ行動」を自ら重ねていたのだと感じる。
​無事に歩き通せた奇跡と、励まし合った仲間、山小屋やタクシーの方々、そして圧倒的な表情を見せてくれた北アルプスの山々に、深く感謝したい。

YAMAP記録(任意)

​運を引き寄せた3日間――表銀座縦走と「午前中勝負」の鉄則 / Explorerヒロの登山データ | YAMAP / ヤマップ
​運を引き寄せた3日間――表銀座縦走と「午前中勝負」の鉄則​高松市民登山学校47期の仲間とともに、2泊3日の表銀座縦走へ出かけた。中房温泉から燕岳へ登り、大天井岳、横通岳、常念岳を経て一ノ沢へ下る足跡である。​1日目:途絶えた林道と

ひとこと感想

幸運の数々。山の神に感謝。